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フリーマガジン『ICHIOSHI』22特別号 石井奏美様インタビュー

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石井奏美さん(RNC西日本放送 アナウンサー)

お話をうかがったのは、RNC西日本放送アナウンサーの石井奏美さん。現役のアナウンサーでありながら、2022年の4月、ラジオ番組『アイドルしか勝たん!』のパーソナリティとしての活動もはじめた。香川県をメインに放送される同番組。現在、そのあたらしさとおもしろさから、全国的にリスナーの拡大がつづいている。小学生のときからアイドルが大好きだという石井アナウンサー。そんな彼女に、番組の魅力、アイドルの思い出、アナウンサーという視点から見たアイドルなど、盛りだくさんにお聞きした。(2022年9月30日 収録)

<プロフィール>

石井奏美(いしい・かなみ)さん。RNC西日本放送アナウンサー。趣味:アイドル応援とディズニーへ行くこと。特技:メールの早打ち、フルートの演奏。好きな言葉:信じていれば夢は叶う。毎週火曜日23時30分から放送のラジオ番組『アイドルしか勝たん!』でパーソナリティを務める。そのほか、『シアワセ気分!』『RNC NEWS every.』『今夜もジコチューで行きたい!』『GOOD NIGHT RNC』を担当する。

台本がない!? 番組開始のきっかけは「雑談」

―まずは、番組の内容を教えてください!

石井アナ毎週火曜日の23時30分から、30分間、1つのアイドルグループさんをメインにご紹介しています。選ぶアイドルについては、リクエストをいただいた方だったり、わたしがよくSNSを見ていて、いまキテるアイドルさんだとか、これから流行るんじゃないかとか、プロモーションがおもしろいなっていうアイドルさんだったりを個人的にピックアップしています。この番組に関しては、アナウンサーの仕事としてはめずらしく、台本が一切なくて、基本的には曲を聴いて、話したいことをおもいっきり話しています。わたしが話しているブースの横に窓ガラスがあって、そっちのほうでディレクターがディレクションしているんですけれども、ディレクターがちょっと反応をしてくれているので、ひとりしゃべりではあるものの、会話形式にはなっているのかなと思います(笑)。

―番組の趣旨についてはいかがですか?

石井基本的にはアイドル好きの方に聴いてもらえたらまずうれしいなっていうのが第1です。アイドル好きの方って推しメンはいらっしゃると思うんですけど、やっぱり、ほかのジャンルもだんだん気になってくる方も多くいらっしゃるじゃないですか。その方に推しを増やしてもらおうかなっていう趣旨が第1にあって。第2にアイドルに興味がない人にも、アイドル推しているのって楽しそうだなって思ってもらえたらいいかなっていうのが、この番組ではありますね。

―ありがとうございます。

石井ちなみに番組開始にいたった経緯ですが、たぶん、驚くと思います。うちの会社には、ラジオセンターっていう部署があって、そこでわたしがディレクターと推しメンについて語りあっていたところ、「これ番組にしたら?」というオファーがあってそのまま番組になったっていう感じです(笑)。いちおう企画書をディレクターが書いてくれて、それが通ってという形ではあるんですけど、雑談からはじまりましたね。

―こういう楽しい番組もできるっていうことですね!

石井ラジオは基本的に自由度が高いので、いかに自分の好きなものをしゃべれるかっていうのがあります。ただ、これがもし番組の時間がちがったら、いまのような番組はできていないかなとは思います。香川県のタイムテーブルでは『アイドルしか勝たん!』を、『乃木坂46の「の」』と『レコメン!』の間という、よくアイドル好きの方が聴いている時間帯に、組んでくれています。やっぱり昼間だと、もうちょっとのんびりした作りにしないといけないとか、アイドルさんの成り立ちをもうちょっと説明しなきゃいけないなということがあるんです。(番組を)夜中だったら放送していいよと、ラジオセンターから依頼を受けてやっているって感じです。

―並びがというのは確かに良いですよね。

石井そうなんです。これも、わざわざこの時間帯に入れてくれているので、ちょうどいい並びでありがたいなと思っています。

小学生のころから、ずっとアイドルが好き

―はじめてアイドルを好きになったのは、いつごろのことでしたか?

石井わたしは平成6(1994)年生まれで、今年で28になるんですけど、小学生のときに、モーニング娘。を最初に好きになったのがきっかけですね。当時、モーニング娘。のシールがお菓子屋さんとかにも売っていて、それを学校の友達と集めて見せあうところからかじまったかなというのがあります。集めだしたら1番になりたいって思ってしまって。たぶん、クラスで1番モーニング娘。のシールを持っていたんじゃないかっていうぐらい収集をしていました。これが毎日のルーティーンになっていて、それが生きるうえでの楽しみかもって小学生のうちから思っていたので、小学生のときかなと思っています。

―だんだんグループも好きになって、という感じなんですね。

石井テレビでも拝見していて、わたしがその踊りまねたりしていたので、親が気をきかせてぜんぶ録画をして見せてくれたのもあって。小学生のころからずっとアイドルが好きなんです。親も「社会人になるまで、ずっとだれかが好きっていうのはびっくりした」って言っていましたけど、そういう英才教育があったのかもしれないです(笑)。

―小学校でアイドルを好きになってから、なにか印象に残っている思い出はありますか?

石井AKB48も中学生ぐらいのときに好きになって、そのときは関東に住んでいたので、しょっちゅう握手会に参加していて、秋葉原にある劇場に行くこともありました。ファンの人との交流も楽しかったなっていう思い出がありますね。AKBさんは、みんなのことを応援しているって感じだったんですけど、握手会に行ったときに、大島優子ちゃんがまえにライブで見ていたのを覚えていてくれて、「何列目のそこで見てたでしょ。」みたいなことを言ってくれたのは、やっぱりすごいなって思いました。プロ意識をすごく感じて。本当にみんなのことが好きだったんですけど、やっぱり大島優子ちゃんとかは、アイドルっていうお仕事がすごい好きでやっていて、かつ、そのファンを覚えるコツとかも心得てやっているんだなっていうことに、すごいびっくりしたのと、アイドルってかわいいだけじゃないんだって思ったきっかけがそのあたりでしたね。

―覚えていてくれるっていうのはうれしいですね。

石井うれしいですよね。もちろん覚えていてくれなくてもいいんですけど、ふとしたときにそういうことを言われると、すごくそれはうれしかったですし、かつ、わたしもいまアナウンサーという仕事をしていて、視聴者の方とか取材先の方に会ったら忘れないようにしようと思うようになりました。アイドルを応援していることによって、1回会った方は絶対に覚えようっていう意識がついたなって思います。

―アイドルを好きでよかった、アイドルという趣味があってよかった、という瞬間があれば教えてください。

石井いっぱいあるんですけど、とくに社会人になってから、まわりの人から「それほど好きなものがあるって羨ましい」って言われる機会が増えたんですよね。やっぱり、趣味がある人もいれば、そこまでない人もいらっしゃって。でも、「働いたらこのライブに行ける」とか「今日○○ちゃんがテレビ出るから観るんです」みたいなことを楽しく話していると、楽しみがあるっていいなって、まわりの人から言われることが多くて。それによって色んな人と盛りあがる機会を作れているっていうのも、またいいなと思っていて。もちろん自分自身で完結することもあるんですけど、この推しが架け橋になって、年齢とわず、いろいろな人と友達になれるっていうのがアイドルを好きでよかったかなと最近思います。たぶん、アイドル好きじゃなかったら、いまこのようにお話しする機会はなかったので、そういう面では今回もですけど、すごく良かったなと思います。

仕事の自分とアイドルを推している自分は分けたい

―アイドルの方とお仕事をする機会、何回かあったと思いますが、そのような仕事を、ファンであると同時に仕事相手のアナウンサーであるという目線から、どのように感じていますか。

石井できるだけ仕事の自分とアイドルを推している自分は分けたいなと思っています。実際にSTU48の子と番組をいっしょにしたときは、なるべく好きっていう気持ちは伝えますけど、カメラが回っているところでしかそういうのは出さないようにはしています。お仕事として映っていない部分でアイドルちゃんたちに話しかけると、ふだんはファンの方がお金を払って話しているのに、わたしがお仕事の空き時間だからって無料で行ってしまうのはいかがなものかと思って(笑)。仕事のときは話しますけど、終わったら自分からは話しかけないようにしています。あいさつとか以外は。

―そこはファンとしての自分があってということですよね。

石井そうですね。ファンとしての自分もありつつ、アイドルを応援しているファンの方にリスペクトもあるので、(ほかのファンの方と)おなじ目線でいられるように、へんに恩恵を受けないように気をつかっている部分が1番たいへんかもしれないです。テレビ局に勤めていると、「このライブ、関係者で来ませんか?」っていうこともあるんですけど、なるべく行くならお金を払います(笑)。抽選で漏れてしまって、となったら考えますけど、いまのところ1回もプライベートで(関係者席に)行ったことはないです。

―それはどうしてですか?

石井もちろん行くこともできるんですけど、席がどこになるかっていうワクワク感とかも楽しみたいので、それが逆にラジオでしゃべれることになったりするんですよね。関係者席で観てだと、やっぱりわたしたちとファンの人はちがうんだっていう風にとらえられても嫌ですし、抽選して「アリーナの何列目でした!」っていう話とかのほうがいっしょに盛りあがれる感じがして。アイドルとお仕事するっていう経験はうれしいですけど、気をつかうなとは思います。ちょっと複雑なところがありますね。自制心を働かせなきゃいけないというところで、難しいなとは思います。

アナウンサーとしてアイドルの魅力をつたえる難しさ

―アナウンサーとしてアイドルの魅力をつたえるなかで、難しいと感じることはありますか?

石井ありますね。やっぱりアナウンサーっていう仕事自体が中立でいなければいけないっていうのが第1で。賛成・反対の意見はあると思うんですけど、アナウンサーが「私は賛成ですけど」って言うのはちょっとよろしくないかなっていうのがあって。もちろん反対の人も尊重したい気持ちがあるので。番組のなかで「このアイドルちゃんが好き」って言うのはもちろんいいんですけれども、その子だけを「好き好き」言いすぎてほかの子が下がらないようにだけは気をつけなきゃなと思っています。

―難しいですね。

石井「この子のここがいいんだよ」って言うだけだったらOKなんですけど、「この子のここが、ほかの子より優れている」っていう言い方をするのはよくないので。もちろん比べてしまうっていうのが人間の心理のなかにはあると思うんですけど、それをなるべく言わないようにするっていうのが難しいですよね。やっぱり比較対象を出したほうが分かりやすいので、言いたくはなってしまうんですけど、この子がすごいっていうところだけをピックアップして、どうやって伝えられるかなというのを考えるのが難しいです。

―自分も気をつけないといけないかもしれません。ほかの人に魅力をつたえたいってなったときに、「こっちはこうで」とか言ってしまいそうです。

石井もし比較するのであっても、「こっちはこういう魅力があって、こっちはこういう魅力が1番だと思う、でもわたしはこっちの魅力のほうが魅かれる性格なのでこっちが好き」とかだったらいいかなと思うんです。意外とこの仕事をしていると、だれかを傷つけようとは思っていないのに、「傷ついた」という反応もあったりするので、そのあたりは気をつけながら仕事をしていかないとなとは思っています。

番組をきっかけにファン側の反応も見るように

―今年の4月に番組の放送をはじめてから、アイドルを推すにあたっての心境の変化や、逆に変わらずありつづける気持ちを教えてください。

石井好きな気持ちは変わらずずっとあって、この仕事をしたから、なんか仕事っぽくなっちゃったなということは一切ないです。より観る楽しみが増えたと言いますか。いままでだと、乃木坂のライブに行ったら、わりと推しメンを見て、みんなの曲を観てという感じだったんです。けれども、(ファンの方と)いっしょになって応援しているっていう気持ちを持つことで、広くリスナーの人と共感できる話ができるんじゃないかなって思って、ファンの人の反応とかも見るようになりました。席が天空とかだとちょっと悲しい気持ちになるんですけど、この仕事をはじめてからは、席が遠くても全体のファンの人の反応を見わたせるからいいか、というポジティブな視点があらたにできたかなとは思います。

―ラジオを聴く側のファンの方々のことも見るようになったんですね。

石井そうですね。番組を届けているモデルが、(ライブの)お客さんだと思ったので、アイドルちゃんがはけている暗転のときとかに見たりとか、あたらしいおもしろさができました。見られている側はちょっと嫌かもしれないですけど(笑)。やっぱり共感を1番つたえなきゃいけないお仕事でもあるので、コアな部分もちょっと入れつつ、広くみんなが「そうだよね」っていう部分を放送にのせたいなとは思っています。そのリアルな感じが見られるのはライブだなっていう、あらたな発見はありました。けど、観るほうが前提です。それが1番です(笑)。

アイドルをやりたくてやっている子

―1人のファンとして、ご自身が考えるアイドルの理想像を教えてください。

石井これは悩んだ質問なんですけど、個人の好みで言うと、アイドルをやりたくてやっている子が好きです。アイドル活動を楽しんでいることが理想かもしれないです。もちろん、持って生まれたビジュアルがあって運命的にたまたまアイドルになった子とかもいるとは思うんですけど、そこからアイドルの仕事が好きになって頑張っている子っていうのは、やっぱり応援したくなりますね。乃木坂46の推しメンは齋藤飛鳥ちゃん、あと井上和ちゃんっていう5期生の子が今好きなんですけど、今のアイドル界を見て一番の理想は、山下美月ちゃんです。なんとなくですけど(笑)。

―そうなんですね(笑)。

石井アイドルちゃんのブログもけっこう見るんですけど、やっぱりそのなかでアイドルとしての自分の見せ方を考えて、見てもらうことに喜びとか楽しさを感じている子のほうが、ステージでキラキラして見えるような気がして、個人的には理想かなって思います。自分が仕事をしているうえでも、自分自身が楽しいほうが良いので、アイドルちゃんたちにも、苦しいと思いながらのアイドル活動はしてほしくないなという親心もあり、アイドルを楽しんでいる子が理想かなって思います。

―アイドルが楽しくやっているのを見たら、こっちも楽しい気分になれますよね。

石井苦手を克服して頑張ろうっていう子も応援したいんですけど、そんな無理しなくていいよっていう感じにもなってしまうので、ほんとうにこの仕事にあこがれて大好きでやっている子のほうが見ていて気持ちがいいなと思います。

新しい切り口で、オタク目線のラジオをこれからも

―番組をつづけるなかで、さらに伝えていきたいと思うことはありますか?

石井乃木坂46に楽曲を提供している福島夫妻という、香川に住んでいらっしゃる方だったり、最近だと、アイドルを推している弁護士さんだったりがゲストにいらっしゃっていて、ふつうのキー局の番組だったらアイドルをゲストに迎えるのに、こういう方々をゲストに迎えることが逆におもしろくて、ちがったところからまたアイドルの魅力が発掘できると思っています。この地方局のラジオだからこそのアイドルの見方ができたらいいかなと思っています。

―弁護士さんはつい先日の放送でしたね。

石井そうそうそう!やっぱり番組が有名になるにつれ、アイドルちゃんたちを呼べるようになるかもしれないんですけど、まわりの制作している人だったり、ファンの人だったりで、「これはこうなんじゃない?」っていう考察を楽しむほうがわりとラジオ的には盛りあがるかなと。そういうラジオもないですし、ちょっとあたらしい切り口で、オタク目線のラジオをこれからもつづけられたらなと思っています。

―これからも楽しみにしています。

石井ありがとうございます(笑)。ほんとうに趣味であり仕事みたいなラジオなので、これからもわたし自身が楽しみながら、意外と全国の方が聴いてくださっているので、香川でこんなヤバい番組がやってるぞっていうのが、ジワジワ広がったらいいのかなと思っています。

アイドルが頑張っているから「頑張ろう」と思える

―石井アナウンサーにとって、アイドルとはどのような存在でしょうか。

石井難しいんですけど、でもやっぱり、活力かなって思いますね(笑)。学生のときとかだったら勉強を頑張るために曲を聴いたり、テストが終ったらこのイベントに行こうって考えていました。社会人になってからもそれは変わらずで。生きていると、なにかしら頑張らなきゃいけないんじゃないかって思うときがくると思うんですけど、アイドルを好きなことによって、「このイベントが観られるまでは頑張ろう」って思うきっかけができると思うんですよね。ほんとうに活力で。人生ゲームでいうと、サイコロを転がして、このアイドルのライブに行くっていうマスだったら、たぶん何歩も進めると思うんですよね。わたしは人生楽しく生きていますけど、ちょっとしんどいなって思っている人こそ、アイドルの推しをたくさん増やして、「この子がこれを頑張っているから、ここまでは頑張ろう」って思いながら、活力にして生きていってほしいなって思っている部分もあります。だから、わたしにとってアイドルは活力ですという風にわりと言っています。

―取材は以上になります。本日はありがとうございました。

石井ありがとうございました。(終)

◾information

ラジオ番組『アイドルしか勝たん!』

毎週火曜日23:30から24:00まで、RNC西日本放送にて放送中!ラジコプレミアムに加入すると、全国で聴取可能です。

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